はじめに
今日はこの話。
まず結論から言うと、私は「ない」と思っているし、また、他国でぬくぬくと暮らしている人間が「降伏すべき」などということを軽々に口にすべきではないと思っている。
ではなぜこの話題を取り上げたのか。
それは、自由の護持、民族の誇り、国土への思い、といった点は無論のこと、彼ら(ウクライナの人たち)が恐れているのは、降伏してもロシアという侵略者によって虐殺や非道な暴力にあうということが分かっているからではないか、という問題意識からだ。
そしてそれを過小評価しているからこそ、我が国ではもっぱら前者の観点から、「民族の誇りも命あっての物種」とでも言いたげな無責任な論評が出てくるのだろうと感じたからに他ならない。
それでは改めて、ロシアがどのような非道行為を行ってきたのか、ロシアとチェチェン、ジョージアの2カ国との間の戦争を振り返ってみたい。
ロシアの戦争
チェチェン
94年、チェチェン共和国の独立を阻止するために侵略したロシア軍。それは2度、計15年に渡った。
この戦争では、1度侵略に失敗したプーチンが、モスクワで起こった連続爆破テロをチェチェン武装勢力の仕業とし*、世論の圧倒的な支持を背景に、再度侵攻に出たという経緯をたどる(第2次チェチェン戦争)。
*記事にもある通り、これはロシア政府の犯行だという内部告発もある。
https://www.nybooks.com/articles/2012/11/22/finally-we-know-about-moscow-bombings/
このときロシアは、名目上の「回廊」を設けて、首都グロズヌイ・その他主要都市に向け、制空権を活かした絨毯爆撃・弾道ミサイルを使用した大量虐殺を行った。
戦争自体は09年5月に終結したが、そこまでにチェチェン国民の4分の1以上(前述の20万人)が亡くなったと言われている。
上記の通り爆撃による大量虐殺を行ったロシアだが、その他にチェチェンの人たちにどのような行為を行ったのか。
アムネスティは以下のように報告している。
襲撃の際には、地域や村全体が一時に数日間包囲されて、ロシア軍が一軒一軒の家を捜索し、身分証明書を調べ、人びとを拘束していった。これらの人びとの中には解放された人びともいたが、多くはその後、強制的に失踪させられた。内務省によれば、2000 年夏の終わりまでに、チェチェンの 1 万 5000 の人びとが紛争に関連して拘束されていた。
https://www.amnesty.or.jp/library/pdf/Chechen_EUR460152007_J.pdf
個人が恣意的に拘禁され、隔離拘禁されるが、当局者がその事実を明かさない「一時的」失踪の発生率は高い。隔離拘禁中、「自白」を引き出すために、拷問やその他の虐待を受ける危険性が極めて高い。自白後、彼らは別の拘禁場所に移送され、そこでは彼らの拘禁について記録される。
https://www.amnesty.or.jp/library/pdf/Chechen_EUR460152007_J.pdf
非道の一言につきる。
これだけでもウクライナの人たちが降伏しないという姿勢を鮮明にされている理由が分かるし、プーチンが元々残虐な帝国主義者であることも分かる。
ジョージア
この地域はかつてグルジアと呼ばれていたが、15年にジョージアに改められた。
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO87079600R20C15A5000000/
この国とロシアの間に戦端が開かれたのは08年。
ジョージア軍と南オセチア軍の衝突にロシアが介入したことでこの戦争は始まる(正式には南オセチア紛争という)。
戦闘期間は短かったが被害は甚大で、最終的に数百人の民間人が殺害され、2万人が故郷を離れざるを得なくなったという。
さて、このときのロシアの戦闘だが、これもチェチェン・ウクライナの状況に類似している。
ロシアは、ジョージアの主要都市ゴリの軍事駐屯地を標的としつつ、アパートや大学・病院にも意図的に攻撃を行い、多くの一般市民を巻き込んだ。*
*ヒューマンライツウォッチは、この後、ロシアと協力関係にあった南オセチアの民兵が、グルジア人の財産の略奪、暴行、誘拐を行うさまを見て「絶望的」と評した。
https://www.hrw.org/news/2008/08/15/russia/georgia-militias-attack-civilians-gori-region
また、同団体の18日のレポートにおいては、上記に加え、逃亡する民間人への爆撃、更にはクラスター爆弾の使用にまで至ったという。
https://www.hrw.org/news/2008/08/18/georgia-international-groups-should-send-missions
全く、まともな神経をしていれば、このような国に降伏するべきなどとは、口が裂けても言えない。
まとめ
第2次大戦の勝戦国であり、国連の常任理事国でもある大国ロシア。
しかしその本質は、スターリン時代から変わらぬ、独裁者が運営する帝国主義国家である。
今の私にできることなど、ウクライナの支援に向けた募金程度しかないかもしれないが、西側の一員としてウクライナを断固支持し、一刻も早くプーチンが打倒されることを望む。
以上。