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映画評② バトル・ロワイヤル

序論

駄作。そう言わざるを得ない。

深作(欣二)監督作品でなく、前田亜季が出ておらず、原作*のファンじゃなきゃ絶対に見ていない。**
*厳密には漫画。小説は読んでいない(読むつもりもない)。
*ちなみに2は1とも比較にならない程の駄作で、芸術的才能って基本遺伝しない(コッポラは例外中の例外)んだなあとしみじみと感じたものである。

閑話休題。

何故私はこの作品に絶望したのか。

その理由は主に2つ。

  1. メインヒロインである中川典子(前田亜季)以外、誰一人原作よりも魅力的なキャラクターがいないから(川田は惜しい。山本太郎はやはり役者としては中々のものだったとは思う)
  2. 1に関連するが、原作の改変が全て良くない方向に作用しているから

以下詳述する。

本論

メインヒロイン以外、誰一人原作よりも魅力的なキャラクターがいない

確かしょうがないところではある。

というのも原作のキャラクターは中学生離れし過ぎており、当時中学生から高校生そこらであったであろう出演者達がそこに迫るのは無理があったと思うからだ。

特に柴咲コウが演じた相馬光子などはその最たるもので、あの妖艶なキャラクターを10代の助成が演じるのは相当に難しかっただろう(納得はいっていないが)。

その他七原は藤原竜也なので無理(自分のキャラに寄せるから)なのは分かったが、高岡の杉村、塚本の三村は役への理解が浅すぎて正直全く見ていられない。

その他メガホンでゲームの中止を呼びかける二人組、七原の食事に毒薬を盛る女学生、心中する恋人同士など、端役ながら見せ場のあるキャラクターたちも尽く、中学生が演じたら「こんなものだよな。。」というこちら側の期待値を超えない。

先程前田亜季の中川役は例外と書いたが、これも役への理解そのものが深いということではなく、前田亜季の演じるキャラクターがメインヒロインよりも魅力的だったということなので、一人だけ理解が深くて、ということではない。

山本太郎は年齢的な優位もあっただろうが、もう少し感情表現の幅と体の厚さが欲しかったところだ。

そして桐山は最悪だが、これは次項でじっくり語る。

② 原作の改変が良くない方向に作用している

大きくは2つ。1つ目は担任について。

世界のキタノを出演させる以上、倫理観の欠片もないサイコパスの役をさせる訳にはいかないと思ったのか、家族に見放され、生徒からも嘲笑される一人の寂しい男に仕立て上げているが、こんな倫理観の欠片もない世界でそんな人間が存在するとは思えない。

また存在していたとしても、この物語において担任は重要ではない(そもそも原作では生徒との関わりがない人間だったはず)。

この余計な要素を追加したことで生徒同士のやり取りが薄められてしまったのであれば本末転倒と言わざるを得ない。

そして2点目。

安藤政信演じる桐山和雄。これは最悪と言っていい。

彼の演技そのものにも色々言いたいことはあるが、そもそも原作と全く異なっている設定のため、そこでは比較が難しくなっている(なのでこの点は置いておく)。

したがって、この部分の責任はほぼ100%監督にある。

ではどこがそれほどまでに気に食わなかったのか。一言でいうと、

桐山は下品な快楽殺人者ではなく、高貴なサイコパス

であるのにも関わらず、前者の枠内でしか描けていないからだ。

金髪?志願者?どう読んだらそういう改変をしても良いと考えられるのか、全く意味不明である。

彼(桐山)は元々財閥の御曹司で、容姿・学業・運動、全てにおいて他を圧倒する快活な少年だったが、とある事故で感情を失い、完璧な才能を残しただけの冷酷な人形に変じてしまったという過去を持つ。

そして彼はコイントスの出た目でこのゲームへの参加を決め、次々と生徒たちを手にかけていく。

その上で最後、七原に破れた彼は、感情の復活(の兆し?)を見せて深い闇に落ちていく。

その時七原は思うのだ。

決して最初から「悪い」奴はいない、何かそうなった「きっかけ」があるのだ(だから希望はある)、と。
*ここに共感できなかったから(また重要性を感じなかったから)、深作監督は桐山のキャラクターを改変したのかもしれないが、それなら最初からメガホンを取るべきではなかった。

結論

原作がある作品は映像化が非常に難しいと思う。

だが、原作へのリスペクトがない映画は決して傑作にはなりえない。

以上。

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