読書

「北斗の拳」の良さ

昨日2年ぶりに中学の同窓生にあった。

そしてふと、中学時代にハマっていた漫画を思い出した。

そう、「北斗の拳」

といっても私は平成生まれなので、もちろんリアルタイムでアニメや、ましてや原作を読んでいたわけではない。

おそらくきっかけは、従兄弟の家にあった「花の慶次」だったと思う。

それが思いの外面白く、すっかり原哲夫ワールドに惹き込まれた結果、その原点たる北斗の拳にたどりついたのではないか、と考えている。

と、回想はここまでにするが、こう考えると、やはり思春期に影響を受けたものは後々まで残るものだな、感心してしまう。

閑話休題。

本作は1983年から88年まで週刊少年ジャンプで連載された世紀末バトル漫画の筆頭格ともいうべき作品で、累計発行部数は1億冊にも及ぶメガヒット作品だ。

また、アニメも世界中で放映され、ハリウッドでは映画化までされるほどで、その人気は国内に留まらない。

だが、流石に連載からかなりの時間を要していることもあり、特に最近の10代・20代はパロディか、あるいはパチンコのCMでしかしらない、ということもあるのではないだろうか。

個人的にはその状況は”もったいない”と感じているので、この作品の良さを、記憶を頼りにしつつ少し語れればと思う。

あらすじ

一子相伝の暗殺拳“北斗神拳”の伝承者・ケンシロウが、愛と哀しみを背負い救世主として成長していく姿を描き出す。強敵(とも)と呼ばれる男達とケンシロウの熱い戦い、婚約者ユリアとの愛、そして、同じ北斗神拳を学んだラオウ、トキ、ジャギの義兄弟との絆と別離。そのどれもが現在まで読者を魅了している。

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まあこのとおりであろう。(興味があれば1巻だけでも読んでみてほしい)

それよりも良さ、だ。

本作の良さ

「北斗神拳」という設定

これは避けては通れない。これこそが「北斗の拳」の「北斗の拳」たる所以である。

「ひでぶ!」や「あべし!」といった謎のセリフとともに、体の一部が破裂したり凹んだりして敵が死ぬシーンは、北斗の拳を読んだことがない人も知っていることと思う。

これは、体の気が集まる経絡秘孔を突き、相手の血液の流れを異常促進し、細胞を破壊することで相手の内側から破壊するという北斗神拳のコンセプトから来た表現となっているわけだが、まずここが凄い。

北斗神拳にはそのライバルとして南斗聖拳という存在がいるが、後者が肉をそのまま突き破る「陽」の拳であるのに対し、北斗神拳は上記のように、少し理解が難しい「陰」の拳だ。

となれば、「陽」の方が当然派手で、読者ウケも良いように思える。

だが、結果として、内側から相手を破壊する、というこの拳法の性質こそ、正にこの作品をレジェンド級のものにした。

どういうことか。

例えば「陽」の拳であれば、相手は手を下した瞬間に死んでいる。(そこにサプライズはない)

だが、この「陰」の拳は、時間差で相手の体にダメージを及ぼす。

だからこそ、相手は意識の上では生きているのに、肉体は死にかけているという認知的不協和(使い方あってる?)を起こす。

そしてケンシロウが、「お前はすでに(もう)死んでいる」、と一言を放った瞬間、肉体は完全に滅び、薄れゆく意識下で死を認識する。

派手に四散する死に様もセンセーショナルだが、それに加えてこの哲学性。

これが読者の心を惹き付けないわけがない。

「漢」の格好良さ

フェミニストに怒られそうだが、この要素抜きにして北斗の拳は語れない。

モヒカン頭の「いかにも」な悪者を除き、格好悪い「漢」がいない。(つまり皆かっこいい)

一例を挙げると、

  • 女の為に命を賭ける漢(ケンシロウ、レイ、バット)
  • 子供の為に命を賭ける漢(シュウ、フドウ)
  • 「理念」の為に命を賭ける漢(ジュウザ)
  • 強さに命を賭ける漢(カイオウ、ラオウ)

など、皆生きる「意味」を見つけ、そのために己の拳を振るう。

そこに迷いはなく、結果命を落とすことになっても、正に「一片の悔いなし!」と、例えそう思っていなくとも、「弱さ」を見せて後に残るものを不安にさせたりはしない。

それを有害な男らしさだと断じる人もいるだろうが、私は本当に格好良いと思った。

誰に共感を抱くかは人それぞれだとは思うが、「漢」として生きるとはどういうことかを良く教えてくれる。

痺れるセリフ(シーン)

ここからは、私が痺れた(泣いた)セリフと簡単なシーン解説。*
*読めばあなたにも良さがきっと分かる。

レイとのお別れ

ラオウとの闘いに敗れた南斗水鳥拳のレイ。

ユダとの闘いに勝利するも、ラオウによって突かれた秘孔により死は目前。

その彼が、最期の姿は決して見せまいと、以下のセリフを残して一人小屋の中に入っていく。

最初から最期まで余りにも格好いい。

さらばだ!

北斗の拳 10巻より

サウザーの最期

シュウを殺しケンシロウに挑むも、策を見破られ破れたサウザー。

度重なる鬼畜の所業にもかかわらず、痛みのない死を与えたケンシロウに送ったセリフ。

南斗聖拳の終わりと、北斗の闘いの始まりを告げる瞬間。

正に「決着」のワンシーン。

北斗神拳伝承者……俺のかなう相手ではなかった……

北斗の拳 10巻より

ケンシロウの復活

ラオウとの闘いを制し、ユリアと共に消えたケンシロウ。

ときは流れ、かつて共に旅をしたリンとバットも成長し、「北斗の軍」を立ち上げてあらゆる暴力に立ち向かう。

そんな中、敵に追い込まれ絶対絶命の窮地に追いやられたところに、ケンシロウが帰ってくる!

以下のセリフは、「お前は何の化身か?」と敵に聞かれたときのケンシロウの答え。

それまではインドラの化身だとか、北から来た(北斗七星の使い?)というようなことを言っていたケンシロウの精神面での成長が垣間見れる瞬間。

ただの人間だ

北斗の拳 12巻より

まとめ

この作品はポリコレだとかSDGsだとか、近年の社会的風潮からすればとても優等生とは言えない内容だし、なかなかハードな描写も有り、小中学生には手放しでおススメできないと言われるかもしれない。

だが、そんな中にも(そうであるからこそ)魂を打つ作品というものは有り、そんな読書経験をしてみるのは決して悪くないことと思う。

以上。

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