この話題。4月から晴れて保育園児となった我が子。
それ自体は本当に素晴らしいことなのだが、室内でのマスク着用がマストだという連絡が来た。
公立なのでリスク対応のためにそうせえざるを得ないという事情は分かるものの、どこかモヤモヤする。
それは恐らく、それが本当に必要だとは思えないからだ。
そこで、この施策の有効性自体を、医師ならざる私が、手に入るデータで少し考えてみる。
経緯
そもそも本事象の発端は、全国知事会からの要請にあった。
厚労省は現在、窒息などの危険性があるとして、2歳未満の子供にマスク着用を推奨しておらず、2歳以上についても一律の着用は求めていない。そのため平井会長が同日、「従来の仕様より踏み込んでいただくことが必要だ」と求めた。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20220203-OYT1T50231/
これを受け、後藤厚労相は一時期前向きに対応する意向を示したものの、有識者会議、分科会からの反対が相次ぎ、分科会の逓減からは「2歳以上」という文言は削除され、「可能な範囲で、一時的に、マスク着用を推奨する」という穏当な?記載になったというわけだ。
なのに何故保育園ではマスク着用を求めるのか、どういう権限があるのか、というモヤモヤ感はあるわけだが、行政の論理を探ることが本題ではないので、ここでは置いておく。
飽くまで私が知りたい(そして多くの親が気にしているであろう)のは、
- メリットがデメリットを上回るか
である。
したがって、ここからはこの線に沿って考えていく。
メリットがデメリットを上回るか
https://toyokeizai.net/articles/-/514619?page=4
まとめとして読みやすいので、この記事からメリデメを考えたい。
まず、記事にもあるように、日本小児学会は、「乳幼児のマスク着用の考え方」として、以下の要旨を発表している。
乳幼児のマスク着用には危険があります。特に2歳未満の子どもでは、気をつけましょう。
乳幼児は、自ら息苦しさや体調不良を訴えることが難しく、自分でマスクを外すことも困難です。また、正しくマスクを着用することが難しいため、感染の広がりを予防する効果はあまり期待できません。
https://www.jpeds.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=117
これを踏まえれば、こちらも今西医師の言う通り、一律で2歳以上にマスクを付けさせるというのは、特に早生まれなど、成長が遅い子に関しては、デメリットの方が大きいと言えるだろう。
一方で、AAP(米国小児学会)は、2歳以上の子がマスクを付けることについて、以下のように肯定的な評価を下す。
Face masks can be safely worn by all children 2 years of age and older, including the vast majority of children with underlying health conditions, with rare exception. In addition to protecting the child, the use of face masks significantly reduces the spread of SARS-CoV-2 and other respiratory infections within schools and other community settings. Home use of face masks may be particularly valuable in households that include members who are in quarantine or isolation, as well as adults and children who have medically complex conditions or are immunocompromised or at increased risk for severe disease.
(拙訳)マスクは、稀な例外を除き、基礎疾患を持つ大多数の子どもを含む、2歳以上のすべての子どもが安全に着用することができます。マスクの使用は、子供の保護に加え、学校やその他の地域社会におけるSARS-CoV-2やその他の呼吸器感染症の蔓延を大幅に減少させることができる。家庭でのマスクの使用は、検疫や隔離を受けているメンバー、医学的に複雑な状態にある大人や子供、免疫不全や重症化するリスクの高い人を含む家庭で特に有効であると考えられる。
https://www.aap.org/en/pages/2019-novel-coronavirus-covid-19-infections/clinical-guidance/face-masks-and-other-prevention-strategies/
これについて今西医師は、アメリカは前提としてマスク着用が社会全体に浸透しており、また2歳以上の子のケアも十分に可能な体制が整っているからこそ可能なのであり、マンパワーが足りていない日本の保育現場ではとても不可能であると言う。
この見解については全て首肯できるわけではないが、日本の配置基準の低さなどを鑑みると、やはり日本では2歳を基準として一律でマスクをつけさせることのメリットが大きいとは言えないだろう。
http://hoiku.asablo.jp/blog/2012/02/23/6346378
また、当記事では、医学的な見地のみならず、発達心理学の専門家にも話を聞いているが、この先生も、マスク着用、食事の際の沈黙の強制など、子供の行動を規制することがストレス要因になりうる点を危惧している。
まとめ
そこまで多くの観点から検討が出来たわけではないものの、少なくとも2歳児を一律対象とした強権的な「規制」を正当化することはできないと言えるのではないだろうか。
勿論、元よりそのようなことはないと思ってはいるが、ではその場合、ゆるやかな「規制」にどれほどの意味があるのか。正しい着用が効果を生む、というのがAAPが語るメリットなのだとすれば、それ(ゆるやかな「規制」)はポーズ以上のものにはならないということではないか。
あまり期待はしていないが、行政には「空気」でなく、「論理」で考えてほしいものだ。
以上。