26日、今回ロシアがウクライナに対して仕掛けた戦争を表現するに際して、林外務大臣は「侵略」という言葉を用いてロシアを強く非難した。
参考:https://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000246040.html
24日には「侵攻」という言葉を用いていたので、これは「侵略」という言葉が「侵攻」を上回る非道な(より非難に値すべき)行為を指す概念であり、かつ26日時点ではロシアの行動がそう評価すべきものに変わったということを指していると考えてよいだろう。
参考:https://news.yahoo.co.jp/articles/0ba16f86647b2edee2cab3789060402045ade20d
では改めて、この2つの言葉の定義を確認しよう。
辞書によると、
侵攻:[名](スル)他国や他の領地に攻め込むこと。「内乱に乗じて敵本土に―する」
https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E4%BE%B5%E7%95%A5/#jn-115934
侵略:[名](スル)他国に攻め入って土地や財物を奪い取ること。武力によって、他国の主権を侵害すること。「隣国を―する」「―戦争」
となるようなので、この類義語の意味の差は黒字の部分にあると言って良い。
確かにこの定義から考えると、「侵攻」は他国に攻め込んだ段階で使える言葉のようなので、とりあえず動かしがたい(ウクライナ侵入の)事実が明らかになった段階で使用したことに違和感はない。
では今はどうか。
林外相の認識通り、ロシアは(動かしがたい事実として)ウクライナの主権を侵害している。*
*ここでは主権を以下の最高権(対外主権)として解釈している。それは即ち、「内政不干渉の原則および国家主権平等の原則(国際連合憲章第2条第7項、友好関係原則宣言)では、各国は明確な領域に基づく国家管轄権を確立し、その管轄領域内への他の国家の介入を排除される」という意味であり、誰もが認めるウクライナという主権国家の都市(例えば首都キエフ)に軍事介入しているロシアは明確に主権を侵害しているということになる。(まあこう考えるとドネツクとルガンスクに侵入した時点で上記同様の理由から「侵略」だろとも言えるわけだが、一先ず攻め込んだ、という事実だけをとって「侵攻」としたというところは理解できないではない。)
参考:https://www.weblio.jp/wkpja/content/%E4%B8%BB%E6%A8%A9_%E6%A6%82%E8%A6%81#%E7%B5%B1%E6%B2%BB%E6%A8%A9%EF%BC%88%E5%AF%BE%E5%86%85%E4%B8%BB%E6%A8%A9%EF%BC%89
上記により、今この時点(26日)では、ロシアの行動は「侵略」と表現するのが正しいと思われる。
であるならば、何故メディアはこの期に及んで「侵略」という言葉を未だ使わず、「侵攻」と言い続けているのか。
(文脈は違えど、右も左もだ。)
参考:
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220226/k10013501861000.html
https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000246020.html
https://news.yahoo.co.jp/articles/80c73bdbbb4956fce8b8b2690e953777edc655ec
ちなみにロシアでは「侵略」という言葉は禁止らしい。
参考:https://www.afpbb.com/articles/-/3392108
何らかの圧力がかかっているのかどうか知らないが、ここはどうか単語一つと軽く見ないで、メディアとしての矜持を持ってロシアの「侵略」は許さないと声を挙げるべきだ。
以上。