はじめに
大分前に話題になったこの本。
最近幼児教育に関心を持ち始めたので、まずは一番読みやすいものを、ということで、Amazonで評判の良かった漫画版の「学力」の経済学を購入。
結論、非常に面白く、ためになった。
原作について林修氏が全国民必携といったらしいが、読みやすさも考慮してこの漫画版を必携にすれば良いのではないかと感じた。
以下、私が面白かったポイントを3点。
面白かったポイント
①ご褒美は大切。ただし、「アウトプット」よりも「インプット」に
人は目先の利益に惹かれて、遠い将来の利益には余り惹かれない。
それは大人もそうだし、子供もそうだ。
特に子供は、大人に比べると自制心や成功体験も少なく、今我慢することの便益が余り見えていない。
したがって、やる気を起こさせるためには目先のご褒美が必要だ。(おやつとかお金とか)
そしてその際、アウトプット(テストの点数、成績)ではなく、インプット(勉強時間、読んだ本の数)に対してご褒美を上げることが効果的だという。
確かにこれはよく分かる。
アウトプットの方は努力がダイレクトに影響するとは限らない、かつ先のことだが、インプットの方は努力がダイレクトに影響し、かつ目先のことだ。
小さな成功体験を積ませることが、その先の大きなゴールに子供を導くこととなる。
指導ではなく誘導、そして目的づけではなく動機づけが重要だと解釈したが、これは実に理にかなっている。
②子供の「能力」ではなく「努力」を褒めろ
とある実験で、子供の「能力」を褒めた場合と「努力」を褒めた場合で、成績・意欲に差がついたという。
前者は解けない問題があると自分の「能力」に問題があると感じ早々に諦めるのに対し、後者は解けない問題があっても「努力」で乗り越えられると信じ、ひたむきに取り組むとのこと。
これも納得。
例えば子供に対して「この子は天才!」なんていう褒め方をしたとして、その子がそれを鵜呑みにしたようなケースを考えると、難しい問題に出くわしたとき、「天才の俺でも解けないんだから誰も解けないだろ」と傲慢になったり、「俺は親がいうほど天才じゃなかったんだ」と諦めたりするんじゃないかと想像する。
なぜなら、彼らにとっては「努力」は「能力」をカバーできるようなものだという認識がないから。
普通に考えれば、「能力」だけで乗り越えられる問題なんて直ぐに尽きる。
そうなればあとに残る解決方法は「努力」しかない。(これは理の当然だ。)
したがって、その力を伸ばすために、①の容量で定量的な「努力」を褒め、おのずからその力を養うように動機づけ、誘導する。これも理にかなっている。
③「やり抜く力」と「自制心」を鍛えろ
これまたとある実験で、幼児に就学前教育を施した層とそうでない層とを追跡調査した結果、①学力、②雇用、③年収といった項目の全てにおいて、前者が後者を遥かに凌駕していたことが分かった。
だが、その一方、所謂認知能力(学力・IQ)の差は8歳前後で消失していたという。
では一体、この差を生み出したものは何なのか。
それは非認知能力(特に「やり抜く力」と「自制心」)だという。
何故か。
「やり抜く力」は、学歴・年収・雇用などの面において子供の人生の成功に長期に渡る因果関係を持ち、「自制心」は教育やトレーニングで鍛えて伸ばせるからだ、というのが結論だ。
大人になった者の実感としても、この2つの力に秀でた人間が成功しない(失敗しない)というのは余り考えられず、成功要因として極めて重要なファクターだということには異論がないのではないだろうか。
また、前者についても、ポイント①②のやり方で伸ばすことが可能なので、結論としてはすべて教育・トレーニングでカバーできるということになるだろう。
つまり、ここまでに挙げたポイントは「子供の成功」をゴールとして、すべて有機的に繋がっているわけだ。(論旨が明確で素晴らしい。)
最後に
氏が書かれた本として、以前「原因と結果」の経済学を読んだが、こちらも非常に良い本だった。
また、これを期に、ヘックマン先生の本とオスター先生の本も読もうと思うので、終わったらまた書く。
「教育にもエビデンスを」
以上。